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小沢健二 ひふみよ その2

全てのライトを落とした状態でスタートした「流れ星ビバップ」。それまでざわついていた-期待とか、不安とか、ホールの観客全ての感情がないまぜになっていた-空気が、一気に爆発した。歓声と、拍手の中、小沢健二は変わらぬ声で、歌を歌い、音を奏でる。熱狂の中、コンサートはスタートした。



1番が終わると、いったん音楽がやむ。ライトが小沢健二の顔を映し、彼は2003年のニューヨークで起こった大停電のエピソードを語りだした。
暗闇の中で、市民が自立的に、街を維持する話。やがて暗闇の中音楽が鳴り響き、パーティーが起こった奇跡。

改めて電気が消えて続きが演奏される。さっきまでの、爆発的な興奮は少し引いていて、暗闇の中で、人々は音楽でつながっていること。MCで彼が語った光景が、今ここに再現されている。


暗闇の中で、「僕らが旅に出る理由」の演奏に続く。心変わりは何かのせい、あまり乗り気じゃなかったのに。恋人の一人旅を見送る彼の気持ちと、彼の長い旅を見守ってきた観客たちの気持ちはどれだけ一緒だったのだろうか、さびに入るかはいらないかで、ステージライトが一斉についた。大歓声。変わらない演奏、そしてそのたたずまい。一瞬で、その前に語っていた、「音楽で、今までと違う世界を体験する」ということ、「その経験は、きっと忘れない。記憶の底に引っかかる」であろうステージが、本格的に目の前に現れたことを感じた。彼が、少しあとに演奏した新曲のタイトルを借りるなら時間軸は明らかに曲げられ、何年もの時が、一気に重なった瞬間。

この先も、ライブは続いていくが、たぶん、この瞬間の空気というのは、そのとき、その会場にいなければわからないと思う。
その空気に僕は一瞬戸惑い、その中で奏でられた「オト」の強度に驚いた。
by nariyukkiy | 2010-07-07 01:20 | oza


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