Pray For Kumano

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熊野古道 小雲取超えのハイライト、「百間ぐら」からのぞむ熊野の山々。2011/08/30

この2,3日もしないうちに豪雨が襲い、流された土砂の痕が、あふれた河の痕が至る所にむき出しになっている。

そんな報道の写真を見るたびに、この熊野への旅が幻だったかのように思える。
このエントリをあげるか、結構悩んだけれど旅の記憶と、熊野の復興を祈って、こっそりとUPする。





旅の始まり。天王寺からオーシャンアローで一路新宮へ。
新宮。中上健次の出身地であり、「路地」を嫌がおうにも意識しながら神域へと。

途中で八咫烏の石碑があったりと、ここが日本古来の「神」が住まう場所であることを意識する。

熊野速玉神社と、神倉神社のゴトビキ岩。
急な階段の先に、崖にはりついているかのような巨岩と「速玉」の名前が示す熊野川の雄大な景色がこの旅が「神様」と一緒にあることをおもう。

その日の宿は勝浦。
禁断の、しかしおいしい肉を食べ翌日は那智勝浦へ。

那智川沿いの道-そう、今あの土石流に流されてしまった道に沿って、こうやって山へ向かって登って行って唐突にこの滝が現れた時の敬虔な気持ちはきっと変わらないだろうと思う。

それくらい唐突に、自分の頭の上に滝が現れた。
圧巻。

水量とかなんとかいう前に原生林の中、これだけの岩肌にこんな荒々しくも神々しい(そしてその神はときに牙をむいた、わけだが)滝はないだろう、と思う。それくらい圧倒的。

参拝後、いよいよ本宮に向けて歩き出す。ここから、小口までの大雲取越え、そして小口から請川までが小雲取超えあわせて30km、1泊の旅程。

那智大社ではそれなりにいた観光客だが、古道に入った途端、ほとんど人ともすれ違わなかった。
那智の原生林から、植林された杉林のなかを石畳がのぞく古道が続く。足を止めると風の音だけが、いや時には風の音さえもしない古道。その昔は茶屋があり、旅籠があり、人が行き来していたであろう道は静寂とどこかはりつめた空気が支配していた。

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途中、湧水が街道の横に小さな流れを作っている。その先には丸い、大きな石、そして倒木。
きっと雨が降るとこの流れは大きな濁流となり、あの石をどこからか運んでくるのだろう。

亡者に出会える、という昼なのに暗く長い下り坂。
「ひだる」という妖怪が住むと南方熊楠もいっていた下り坂の途中、その先の峠を登り切ったあたり、丸い石がごろごろしている。街道は生活の道であり、同時に修行の道でもある。

聖俗が入り混じった街道、自然と人工の入り混じった道、この道には熊野の自然と、人々の生活と信仰とが普通に混在しているのだなと、我々のほかに誰もいない街道を歩きながら感じる。

胴切坂、と名付けられた急な坂を下り、茶屋跡をすぎると少し開けた場所に、大きな石が祭られている。
円座石(わろうだいし)だ。

梵字がうがたれたその岩はコケに覆われ、神様が談笑していた、と言われてもおかしくないたたずまい。
ここまでくれば、もうすぐ小口の集落。この日、20km近く歩いたのか・・・。

宿泊したのは、熊野川温泉。
小口からは川沿いに・・・とてもきれいな川で、まるでサイダーが流れているかのような・・・下って行き、熊野川との合流地点近く日足地区の温泉だ。

ここの露天風呂で寝そべって空を眺め、星を眺め、熊野地鶏のすき焼き。
まさに桃源郷だった。

翌日の小雲取超えは、前日に比べればただのハイキング。登り口からの急登をしのぐと眼下には透明な、赤木川が大きく蛇行し、まだ朝の太陽を反射している。

一度峠をあがってしまえば、昨日の大雲取とちがいそれほど高低差もなく、百間蔵の絶景から、遠くにゴールの請川が見えていて、熊野川がどんどん近づいてくる、風景は昨日とはまた違う趣。なんとなくゴール(熊野大社)が見えるような、見えないような。

請川から川湯温泉で寄り道。大塔川?というのかな。この川もきれい。温泉が湧いている変わってのも珍しい。そのあとはちょっとずるしてタクシーで大斎原へ。もと大社があった場所。中上健次の「木の国・根の国」にあったけど明治の大水害で流されて、遷宮した跡地。

土石流のもとになった集落は今はない、「苔」という集落だったとかなんとか。
集落、というよりは彼の言葉では「路地」であり、「部落」であるが、、、まあその辺は本を読んでいただければと思います、はい。(決して他意はございませんので、、、)

川の土手のすぐそばにある、その「今は何もない」場所は確かに神域。現有の本宮大社より、こっちのほうがよほど「神様」を感じる空間。

大きな川の土手で、サイダーを飲んで、本宮を後にした。清冽な川沿いに田辺の町へ。
皆の川といった、これまた「木の国、根の国物語」で見た地名を通りながら旅の終着点へ。

2泊3日の旅は、そのほとんどを熊野の神域へと向かう道で過ごした。
木々は原生林だったり、作られた森であるにしろその力は都会に住んでいる、もしくは平野に住んでいる今うける力とは違い圧倒的。

いつの日か、近いうちにまたあの圧倒的な空気の中に身を投じたい。
その日が来ることを、心から祈ります。
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by nariyukkiy | 2011-10-06 00:15 | sunday people


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