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光善寺 カメラオブスキュラ(ホンマタカシ もう一つの電車)

急なカーブは光善寺カーブ、というらしい。
京阪本線が高架を降り、枚方の、大阪の雑然としたローカルな駅は地上にある、ひと昔まえの佇まいの駅。

その下りホームにある、(京阪の人も存在を忘れかけていたらしい)小さな仮眠室がカメラオブスキュラの暗室になっていた。

狭い階段を登り、茶室の入口のようなにじり口を入ると四畳半の暗室があり、窓に据え付けられた穴から入る光。

目が慣れるのにつれて壁一面に、外の風景が浮かび上がってくる。反転して。

最初は空と架線。ぼんやりとしている地上の暗がりを動く自動車が少しはっきりしてきたら、踏切が鳴る音がして電車走ってきた。

キツいカーブだからか、目が慣れたからか電車がカーブを曲がって通過するのが分かる。

自動車のランプ部分が反射して天井に向かっていく。確かに外の風景なのだけれど色も輪郭もぼんやり見えるからか非現実的というか、確かに写実的な映像として網膜に焼き付いていく。

仰向けに寝転がって壁面を見上げると、正の画像として見える。

カンカン、と踏切が聞こえて電車が近づくと振動が背中に伝わる。目の前の壁面に電車が見える。小さな暗室を通して、ぼんやりとした視覚とダイレクトな聴覚と振動とが身体に入ってきて、少しバランスが悪い感じが、逆に心地よくなってくる。

踏切が鳴る。しばらくすると天井を電車が走り、止まる。人が降りたかどうかはくっきりとわからなかったり、あ、人かも、という影が見えたり。振動が遠くなりつかの間の静寂が訪れる。

その繰り返しは、都市の中で、電車が走る日常の風景であり、反転した地上の生活を雲からひっくり返って見ている神さまの気持ちのようでもあり、いつしか時間が経っていることを忘れてしまいそうになる。

外に出ると、普通の、駅と電車が走る風景。
さっきの方がパノラマだったな、とか思ったより自分の視野が狭いことに驚きながら、狭い暗室ー仮眠室を見上げる。
窓に小さな穴が2つ。

その写し出していた、天井の駅。

カメラオブスキュラの体験。
by nariyukkiy | 2016-02-13 01:01 | sunday people


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