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夜のみだらな鳥

不協和音の中に、メロディを感じ、いくつものハーモニーとビートが重なり、SAXがそこをたゆたう。

菊地成孔とペペトルメント・アズカラールのホール公演第5弾、九段会館では3回目になるのかしら。(あとどこだ?有楽町と天王洲か)

この間のクラブハイツ公演は、ピアノが電子だったり、音響よりも雰囲気をとっている感があったけれど、ホールでは音響も、雰囲気もどちらもいい。

イントロのインプロ、おなじみといえばおなじみか。コンガ、ドラムが静かにリズムを刻み、ストリングスがその上に乗る。そして、次の曲へすっと、入っていく。

「野生の思考」から組曲シリーズが演奏され、「南米のエリザベステーラー」からの「京マチコの夜」へとつながる。

一瞬の静寂の中、「はなればなれに」が演奏される。いつもの口上はなし。そして、カヒミ・カリィが紹介もなく(しかし、いつもと同じタイミングで)すっと舞台に現れ曲が終わるのを待つともなく待っている。

この次の瞬間があまりに美しかった。

南博がピアノで一音を奏でた瞬間、その曲が「the Look of Love」であることが伝わった。カヒミ・カリィがそのウィスパーボイスで歌いだす。

そのときの九段会館、きっと菊地成孔のキャッチフレーズである「官能と憂鬱」に多い尽くされていたのではないろうか。

「パリのエリザベステーラー(存在しない)」を朗読し、まだサックスソロが続く中カヒミ・カリィは退場していく、もともと舞台上に女優は存在しなかった、とでも言うがごとく。

「プラザ・レアル」のタメと解放。さまざまなリズムと旋律の中を泳いでいくサックスソロは、デートコースとどこが違うのだろう、と思うほど自由な音だった。

本編の最後は、バンドネオンのソロから、ピアノの印象的なイントロ、そしてその華麗さはまるで没落貴族の葬式であるかのごとき「"ルペ・ベルスの葬儀」

いつもの饒舌なメンバー紹介のあと、カヒミ・カリィとのかみ合わない会話の最後に菊地成孔は
「この曲でカヒミさんとはお別れし、またわれわれだけで、、、旅に出ます」そういって「クレイジー・ヒー・コールズ・ミー」をはじめた。

ラストは「You Don't Know What Love is...」(Vocal)
幸運なことに、立ち見だったので踊りだせそうだった。





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九段会館を覆っていた、なんともいえない「官能と憂鬱」は、他の場所では味わいがたい何かだ。
ジャズである、しかしジャズではない何か。

美しい音楽であり、退廃的であるが、どこか癒される音楽。

巷にながれる「消費される」だけの音楽でもなく、もっとタフな音楽。

そう、旅は続くんだ。人生も。こうやって、何かにつまづいても生き返らせてくれる「何か」に出会うことで、先に進んでいく。そう思える音楽が、ここにはあった。

<セットリスト>

インプロ(LoungeTime#1?)
組曲「キャバレー・タンガフリーク」夜の全裸
京マチ子の夜
組曲「キャバレー・タンガフリーク」孔雀
はなればなれに
The Look of Love
パリのエリザベス・テイラー
組曲「ヴィオラ・トリコロール」第一楽章 紫
組曲「ヴィオラ・トリコロール」第二楽章 赤
プラザ・レアル
チェルシー・ブリッジ
組曲「キャバレー・タンガフリーク」儀式
ルペ・ベレスの葬儀

アンコール

Crazy, He Calls Me
You Don't Know What Love Is
by nariyukkiy | 2007-06-30 20:28 | music


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